日々つれづれ2

はてなダイアリーから引っ越しさせました

「ヒットする」のゲームデザイン

http://www.amazon.co.jp/dp/4873114187
詳細について書くと怒られちゃうので、さわりだけでご勘弁なんですが、ある家電メーカーの人とUIのデザインについて話をする機会がありました。その時に家電ではマーケットインによるモノ作りが主流で、ゲーム業界ではプロダクトアウトオンリーという印象だけど、ぶっちゃけどうですかと聞かれまして、いやー最近はゲーム業界も大作化の進展でリスクが高くなっていて、マーケットインの考え方が出始めてますなんて話をしたのを覚えてます。その時に例に出したのがこの本でした。元EAのゲームデザイナー&ゲームライターの共著で、コーエーテクモの松原社長が原書に惚れ込んで自ら監訳を担当。僕も巻頭の鼎談部分でちらっとお手伝いしています。献本されて改めて読んで、いやーさすがにアメリカっぽいなーという印象です。
なんといってもポイントなのは、就職セミナーとかで良くやらされるMBTI(Myers-Briggs)分析と、ゲームデザインを結びつけて論じるという部分でしょうか。ほら、ISTJ(内向・感覚・思考・判断型)は管理者タイプで、ESFP(外交・感覚・感情・認知)型は芸能人タイプだとか。ちなみに僕は自己分析の結果、たぶんENFP(外交・直感・感情・認知)型で、なんと偶然にもジャーナリスト向きなんだそうです。んでもって、この16タイプ別にマーケット指向のゲームデザインを行う上でのツールが「DGD1モデル」という考え方で整理されていて、向こうの人はこんな風に考えるんだナーなんて、読んでいると参考になります。個人的には第7章のユーザーインターフェースデザインの部分が簡潔にまとまっていて、とても勉強になりました。
んでもって巻頭鼎談でも、巻末のフォローでも、しつこいくらいに「この本は魔法の杖ではなくて、自分なりに解釈して使いこなすことが大事」と書かれていて、ま、そりゃそうだよなって感じです。ただ、こうした市場分析に基づくゲームデザインというのは、少なくともコンソールのAAA級タイトルにおいては、企画を通す上での必須アイテムになるのではないかと。別にこの本が完全だとは、著者も関係者も誰も思ってないはず。でも、こうした考え方を土台に、さらに次のツールが出てくるのは間違いないでしょう。逆にこんなの面倒だ、自分が楽しいゲームを作って一山当てたい、なんて人は今ならiPhoneFacebookで「考える前に作れ」って感じでしょうね。このどちらもゲーム業界なんだと思います。そして、その間にWiiやDSなんかがある。それくらいゲームが、ユーザー的にも産業的にも広がって、一括りにできなくなっている、ということが改めて感じさせられます。
余談ですが、ちょっと思ったのが一昨年のMIGS(モントリオールゲームサミット)の任天堂:小泉さんとEA:クリス・ヘッカーさんの講演(参考記事)。小泉さんはシリーズを続けたり、ユーザーテストをくり返しながら、遊びにくさを取り除いていって、ゲームの完成度を上げていく重要性について語られていました。かたやヘッカーさんは、システム系AIを進化させていって、プレイヤーとゲームの「架け橋」を作っていくビジョンについて語られていました。今でこそ後者は机上の空論ですけど、将来的にはどうかわからない。この本の説く「マーケット主導型のゲームデザイン」についても、ゲームビジネスの規模が拡大すればするほど、さらに洗練されていくことが予測されます。個人的には先の家電の人じゃないですが、ゲーム業界以外の人が読んで、どう思うか感想を聞いてみたいですね。そしてゲーム業界と、それ以外を結ぶ架け橋になればいいなーなんて思ったりしました。