日々つれづれ2

はてなダイアリーから引っ越しさせました

夢のみずうみ村

先日の続きです。実は土曜日に東京おもちゃ美術館に行ったのは、併設の四谷ひろばで、日本福祉文化学会の福祉と遊び・レクリエーション研究部会による、「アクティビティとレクリエーションの新しい形」という特別セミナーがあったからでした。ま、普通なら存在すら知らないセミナーではありますが、いくつか偶然が重なりまして・・・。
1:朝日新聞山口県デイケアセンター「夢のみずうみ村」に関する記事を読んで関心を持った。なんとここでは施設内通貨の「Yume」を発行していて、ここで介護サービスを受けるには、すべて「Yume」が必要になるという仕組み。んでもって午後3時から毎日、Yumeを賭けての賭博場が開かれて、花札やルーレットに高齢者が夢中になっているとか。エンタテイメントと福祉の融合例という意味で、非常に興味を持った。詳しくはこちら。
http://www.interq.or.jp/manager/yume/index.html
http://www.yumenomizuumi.com/news/tuuka/img/img136.jpg
2:たまたま、僕の義父(妻の父親)が日本福祉文化学会の顧問をしていて、この前、妻の実家に遊びに行ったら、今度こんなセミナーをやると知らされて、暇なら手伝いに来てくれと言われ、おもしろそうだと思った。
3:んでもって場所が東京おもちゃ美術館。こりゃ行かない理由はないでしょう、という感じでしょうか。
でもって義父の前座、もとい基調講演の後で、夢のみずうみ村の藤原先生の講演があったんですが、これが非常におもしろかった。仮想通貨Yumeと賭博場というのは、数ある施設内の仕掛けの一つにすぎなくて、もっと深い次元で総合的に福祉と遊びの融合がなされていることがわかり、刺激になりました。ゲームと福祉といえば、バンダイナムコデイケアセンター「かいかや」の例が有名ですが、どちらも環境の持つ力の重要性をきちんと理解してデザインされているところが凄い。かいかやのリハビリテイメントマシンはデジタルで、夢のみずうみ村はオールアナログですが、その根底に流れている「おもてなしの心」は共通といったところでしょうか。

===前座、もとい基調講演を務めた義父(薗田碩哉/実践女子短大教授)===

===壇上に上がって自ら写真を示す藤原茂氏(夢のみずうみ村代表)===

===毎日開催されている「賭場」ではYumeをかけて勝負===

===終了後のパネル===
でもって僕が一番面白いなーと思ったのが、ゲームデザインとの相関性。高齢者に自発的にリハビリに取り組んでもらうためのステップとして「1:達成感のシャボン玉」「2:有能感のゴム風船」「3:生きがいアドバルーン」という3段階を提唱されていて、小さい達成感を少しずつ積み重ねつつ、どんどん熱中させていくという流れが、非常にゲームデザインっぽい。その上で最も重要なのが、「仕方なくやる」という段階から、「とりあえずやってみるか」と思わせる・・・つまり最初の第一歩を踏み出させること、という点がこれまたゲームと同じだなーと感じさせられました。拙稿「ゲームニクス〜」でいうなら「お立ち台に上がってもらって、気持良く踊ってもらうための手練手管」というところでしょうか。んでもって、それらのアイテムを適切に配置することで、施設全体のデザインがなされている。それも病院風ではなくて、ごちゃごちゃ、がやがや、にぎにぎしい縁日風。個々のゲームデザインというより、ゲームセンターやテーマパークなどの「遊び場のデザイン」と言った方が適切だと思います。

===ちょっとした快感を、大きな達成感に膨らませていく===

===この循環構造をくるくる回していくことが重要===

===山口デイセンターの概要。端から端まで約500m===

===デイセンター全体が「街角」「居間」「居酒屋風」というコンセプト===
あとおもしろかったのが、仮想通貨のYumeを印刷業者に発注して、きちんと「お札」として発行しているところ(施設内には銀行まであり、利息付きで融資もできる)。これをカラーコピーなどで代用すると、お札としてのありがたみがなくて、必ず失敗するんだとか。もうおっしゃる通り、その通りという感じですw
実は僕の実家も山口県周南市徳山市)にあって、施設の一つの防府デイセンターは隣の市だったりするんですが、まったく存在を知りませんでしたw 当日のメモを貼り付けておきますので、興味のある方はどうぞw あとこの施設、常に見学を受け付けている、というかフランチャイズ展開しているそうです。施設を案内するのも介護者の仕事の一つで、これでもYumeが稼げるんだとか。
あと当日のメモを張っておきます。聞き間違い・意味の取り間違いなどがあるかと思いますが、そこは門外漢ですから、広い心でw
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アクティビティとリクリエーションの新しい形
日本福祉文化学会(福祉と遊び・レクリエーション研究部会)

薗田碩哉

出席者:レクリエーション派:20%/アクティビティ派:80%

生き生き豊かにしたい

それまでの福祉=かきくけこ「堅い 厳しい 苦しい 権威主義 こわばった」
 それが本当に優しい、生き甲斐のある福祉だったのか?
あいうえおの福祉に「明るい いい加減 うれしい 笑顔 面白い」

遊び・レクリエーションを大切にしなければ、あいうえおの福祉にならない

介護福祉士 
 養成カリキュラムの中に定着した
 レクリエーション活動援助法
措置の福祉から契約の福祉になった
みんなが選択できる その中には楽しい福祉もある

レクリエーションやアクティビティを研究し、実際に実習し、いいプログラムを開発してきた自負

カリキュラムの抜本的な見直し
レクリエーションの消滅→コミュニケーションにおき変わった

福祉現場におけるレクリエーション、アクティビティの意義の再考

現場でレクリエーションを展開していく仕組みづくり、システムができていなかった
 レクリエーションそのものは介護保険の点数にならない
 日本社会に遊びやレクリエーションが重要だという認識が未だに乏しい
 明治維新以来の近代化
成功の影に置き去りにされたものが、余暇やレジャー、遊び、ぬくもり 
ヨーロッパ 夏 1ヶ月半くらいバカンス〜近代社会の過程で、仕事と余暇を両立させた
一般の社会が余暇をもたないのに、福祉現場が余暇を持っていいのか、という批判 
社会そのものが余暇や遊びを重要視する必要性

新自由主義の台頭
 競争はなんでもいいのか? 世界同時不況
 自由の国アメリカでも国営化 競争と相互扶助
 モノを増やしても地球がもたない
 2009年は転換点 09年は「レク」の年 
 変わることはいいこと 基本的な価値観も変わる

日本の福祉をもう一度転換していく
 大きな政府を追及するわけではないが、福祉にも力点を置いた政府を作って、
 その中で遊びやレクリエーションを位置づけていく
レクリエーションとアクティビティの統合、共同戦線/周辺にはPTやOTなどの専門職がいる
医療・福祉も巻き込んだ共同戦線を社会全般に広げていく

日レクとか協会とか小さなセクトで張り合っても仕方がない 
介護保険を払ってもらえないなら、現場を支えるシステムを作っていく
NPO、市場 経営的な視点
遊びやレクリエーション、アクティビティの専門性を理論立てて構築する
劣化している福祉をもう一度立て直す
問題提起

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藤原茂 記念講演

自己選択・自己決定方式 一番いい

NPO法人 夢のみずうみ村 
 日本で1番大きいデイサービス 定員150人
株式会社 夢のみずうみ社 防府市
 日本で2番目 定員110名

高齢者事業 もともと子供のリハビリ・障害者から

みんなが軽度化 軽度化していくにつれ、事業が厳しくなるジレンマ
倒産の危機 なんとか乗り切ってきた

要介護5から2になった 
2、3が1や自立になるのが多い

自分は一介の作業療法士、経営者

夢のみずうみ村
人生の現役養成道場
 人生は一生現役 道場は望んでくる場所 
ボードから好きなプログラムを選んで張ってもらう
見学者が、みんなびっくりする
 利用者が歩いている/転倒の危険はないのか?
 職員も来た人も歩き回るのがスタイル

自宅から外出してきた場所は、社会性を要求される街角、小社会
施設・病院 2カ所しかない〜貴重な外出の機会 

施設 全長約500m
 生き甲斐養生所 重度向け
 1丁目から8丁目 10Mずつ
 場所に名前を付けて、距離で刻み、一日の歩行距離がわかるようにする

プログラムの中に「なにもしない」のがある
 結構いる プログラムを選ばない限り許されない

やたらと玄関にタンスがある みんなの私物入れ
 400人くらいくるので、引き出し1つが1人分 
 機能の良い人は低い引き出し 
 1ステップ1グッズ タンスの間をもたれ掛かったり、休んだりして歩く
 手摺りがない 「バリアアリー」社会〜社会がバリアフリーでないため
 最初に契約書を締結

電灯は家庭のもの 蛍光灯ではない=家庭っぽさ
 原色を使う 認知を促すため 
 朝は縁日のようなざわめき ゆずりあう 街角だから 
 デイが応接間ではだめ 居間、台所のようなにぎにぎしさ
 上は吹き抜けでキャットウォーク 居酒屋風 
 元気になる 動いてみたい、という気持ちになる

プログラム バラバラでいろいろな活動
 教室 職員&利用者が先生役
 自由軸 先生がない いついってもいい 勝手に言って勝手に始められる

3時 花札 ルーレット ボーリング 常設
 新聞に載った翌日、刑事が来た
 施設内通貨(Yume)があるため 日本円に換金の可能性がある?
 施設内通貨の施設 けっこうある 要注意

心が動く=意思が働くこと
 石がいろいろな形に変わる 
 意思=重い 夢
*心の働き、ゆさぶるかがすべて
 大きな技 能力 →自己選択・自己決定方式
 基本姿勢 意思 行動 の循環
 認知症でも感情はぼけない
  自分で決めて考える=最も重要

できそうなことは介護の人が手を引いてはいけない=引き算の介護 
できないことのみ介護の手を加える
 これがプロとアマの大きな違い
 ひたすら世話をするのはアマチュア
 プロは足すか引くかを明確に見極められる

アクティビティ 社会参加を促す行為
 健康状態を作り出すもと
  味の素 健康の素
  生活機能の視点
  社会参加
  心身機能を鍛える

参加・活動・心身機能をあわせたものが生活機能
 社会機能を促すアクティビティがあるのではなく、社会参加自体がアクティビティ
 アクティビテイを狭い意味でとらえてはいけない

レクリエーション=コミュニティライフの一環
 アクティビティはレクリエーションを包括する概念

完全左肩麻痺
家の移動 心身機能の回復 できるアクティビティが増える 外出、役割、できることがふえていく
左半身が麻痺の女性=私にできないことは1つしかない 
 右手をかくこと(口でかく)
 不便さはあっても、生活に支障がない
  福祉・介護の目標

病気になって 舞えと同じように動きたい
 意思と体 両方 
アクティビティと社会参加は対になっている

YUME 活動するにはお金が必要
 カラーコピーで安上がりにすると失敗する〜印刷にお金をかける
 大事にしようという気持ちにならない
 無銭飲食や無線活動を職員が認めてはいけない
 全職員が共通認識
お金がなければ銀行から借りられる(利息付き)
 コーヒー一杯 1yume 利用者同士で相互監視

パソコン 20台 印刷費は円
シアター 時代劇が人気 
カジノ すさまじいお金の賭け方
クルーザー 介護保険でクルージング あまり遠方にでるのはNG

手で握って歩くとよくない もたれかかったりして歩く
 床もでこぼこ バランス訓練
 風が吹いたり、シャワー、光
 ウエイティングプール

園芸 苗を育てて自宅に持って帰る
 宅配ビリテーション 自宅で実践  
  デイサービスならでは(おみやげ)=自信
 お風呂場では文句 苗の持ち帰りはノー文句
  体を動かすのは意思

食べ物をもって帰る パン 6割男性 
 自己選択自己決定方式

配膳 生活技能(つめきり) 知識 生活の知識
 利用者が職員に教える
 調理のレシピ ガラス細工 過程と施設を結びつける
 木工ろくろ 家で使うモノをつくって持ち帰る

ポパイ 運動器具に名前が付いている
 青春ボート、走れメロス・・・高齢者に馴染みの深い名前にする

心と体の関係 
 本人がしたいことがあるか否か
 三日坊主をたくさん与える

達成感のシャボン玉 すぐ消える
有能感のゴム風船 すぐしぼむ
生き甲斐アドバルーン あがる

「仕方なくやる」から「とりあえずやってみるか」・・・この差が非常に大きい
 
アクティビティ 感動の目づくり 心ほぐし
 心がほぐれると、体がほぐれる
 体に触れずして、ここ尾を動かし、体をほぐす

エビ天とじ丼を自分で作って食べる

ほぐし極意10項目
1:舞台(環境)を用意する
2:言葉・文字が使えたら活用
3:文字の活用(日常語・語りかけるような名称)
4:道具を使う
5:あらゆる感覚の刺激を意識
6:人は人の中で生かされ、生かされる
7:腹を満たす
8:かける(描ける・賭ける・駆ける・書ける)
9:移動すること自体に目的を作る楽しみ
10:どこでも何でも、ほぐし剤は転がっている

体に触れないで
心を揺さぶる
体を動かす
行きざまを自らの手で揺さぶる

金子みすずの詞

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パネル

新設の施設 
余暇の楽しみがなにもない 監獄と同じ
 ペットボトルのボーリング お手玉 風船バレー
 音楽会など・・・それだけだと限界
元気のないデイケアセンターも多い
 
感想と質問

薗田
意思が一番大切 
生き甲斐アドバルーン うちの学生にもぴったり
介護だけではない、日本社会を活性化させる
Yumeの稼ぎ方は?

高橋紀子
ここ数年モチベーションが低くなってきた
トライできる環境 3000円まで トップの考え方
人の動かし方

多田千尋
ステージに上って降りるのもアクティビティ
哲学と実践 世直しのような印象
なぜ山口の萩? 松下尊塾
達成感 有能感 生き甲斐〜幼稚園の描画指導
 子供に筆をもたせた時点で90%は終わっている
 描きたいと思わせること
 動機を作るためのたゆまぬテクニック
現場での現実 勉強の成果をどう実践につなげていくのか?

稼ぎ方 最初は61000ユーメが祝い金として手渡される
(お札を10枚ずつもらう)
血圧測定10ユーメ 
トータルとしてお金が足りなくなる仕掛け
 クイズを解く タオルを畳む などの内職 
 歩行など

モチベーションの持たせ方
 1泊2日で全職員93名 1泊2日の合宿 230万円(予算)
 13時間 テーマで議論 そういったことを惜しまない
 立川市の養護施設に住み込みで大学に通う 
 トップや経営のあり方を学ぶ いかに時間を割くか
 2人の法則 各職員がすごい 楽しい職場、いい職場
 恋愛沙汰のもめ事 泣き叫びながら叱る
 当事者を呼んで、お互いに話し合う 
  人間性を否定しないで、互いに言い合う(大変)
  体育会系

うまくいかない施設 リーダーや経営者がダメ
 我一粒の麦なれど
  一人ではなにもできぬ 
  だが一人が始めないといけない
 知識より意識

稼ぎ方も大きな特徴
 視察グループをガイドする=Yumeが稼げる
 (水先案内人)毎日見学が来る
 フリーマーケット 古着など
 サッカー 相撲 野球 トトカルチョ

片手の料理教室 師範 師範代 
時給700円 給料 利用者
11名 非常勤の職員
4名 利用者が職員
中の利用者を活用しながら人手不足を解消

アメリカ オーストラリア 利用者がアルバイト
 利用者=お客様 職員の有効活用
 縛っているのが当たり前 骨折だとクレーム

移動 少しでも足が上がると「歩けるよー」
 〜あの人も歩ける/他の人に宣言
 歩行の判断を明確にする
 バリアアリーの契約書を最初に結ぶ
PT・OT以外でも判断
 「もたれ掛かり移動」が重要

薗田
心と体が一体 レクも同じ
みんなが支える 個別化してはいけない
 社会性 重要なポイント
 お金=評価 互いに価値を確認しあう 
 地域通貨=グローバル社会だからこそ
個々の決断
 「あげちゃうレクリエーション」ダメ
立川競輪 
 お爺さんばかりしかいない
 必死に考える 投票の結果は個人責任
 リタイアすると決断の喜びが奪われてしまう
  100円から買える
 個人決断=レク、アクの原点
環境づくり=課題
 レク、アクはプログラムではなく、環境づくり
  
今後の展開
 介護保険 自立支援法 
 経営や人材面の問題 元気がなくなっていく

品川区 学校跡地 断念 政治的圧力 2年半
 健康リハビリ 健康ビジネス 社会資源を回っていく
 =>巡礼 人生の証明書
山口県で進める
 9億円の借金 さらに18億円の借金

80歳になっても、障害があっても稼ぐ

6500円くらい 650円 3年後は全額かかるかも?

経営が厳しい現状
 全国で講演をしてお金を稼いで賞与にする
 1人2万円 2000万円 
互いが切磋琢磨できるような会をする
 専門の楽しい会を考える必要性

小学校の跡地利用
 市民が自腹を切る 
 利用者が自分で稼いで自腹を切っている
 校舎 昭和8年に全焼 寄付金 集まりすぎた
 全国のモデル校を作る ドイツ人に設計 廃校
 熱い思いで再利用

京都も伝統 町屋 小学校 明治2年 64校
廃校にするのが大変 跡地利用

自分で身銭を切る=意思が入っている
NPOが学べる点が多い 学習が可能

これからの福祉はエンターテイメント