日々つれづれ2

はてなダイアリーから引っ越しさせました

NIKON COOLPIX950

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フリーになって困ったのは写真でした。サラリーマン時代はフィルムが使い放題で(雑誌がモノクロだったので、よくトライXの安売りを買ってきて使ってました)、撮影済みのフィルムはプロラボに現像と同時プリントを頼めば良く、経費も会社持ちでした(DTPの黎明期で、L版で焼いたプリントを民生用のスキャナでスキャンして、Photoshopで修正してQuarkExpressで組版)。しかし、フリーになるとそんな贅沢は許されません。Webの仕事が次第に増えてきて、速報性が求められる点でも銀塩カメラは不利でした。そこで前回も書いたように、new FM2とストロボと交換レンズ3本をヤフオクで売却して、それに少しお金を足してデジカメを買いました。ニコンのCOOLPIX950です。特にニコンに愛着はありませんでしたが、取材先でこのカメラを使っているライターや編集者をちらほら見かけたのが購入の決め手でした。

COOLPIX950は1999年(フリーになった前年ですね!)にニコンが発売し、高く評価された一台です。定価は125,000円で、今となっては結構な性能のデジタル一眼レフがレンズ付きで買えてしまう金額です。たしかヤフオクで98000円くらいで買った記憶があります。221万画素のCCDにスピンドル式のボディが特徴的で、マグネシウム合金の手触りがずしりとした重みと相まって高級感を醸し出していました。筐体を回転させれば容積が大きいものの、レンガのように平べったくなるので、カバンに入れやすい点もポイントが高かったです。レンズのズームは3倍で、35mmフィルム換算で38mm~115mm。バッテリーは単4電池が4本。マクロに強い点も売りでしたが、残念ながら当時の自分の仕事はイベント取材が中心で、性能を生かし切るまでには行きませんでした。

このカメラはE3やGDCをはじめ、世界中の取材に持っていきました。2000年から2004年まで、基本的にこれ一台で仕事をしていたからです。もっとも、所詮はコンデジなので性能不足が目につき、お金を貯めてオプションパーツを買い足していきました。外部ストロボ(SB28)とフレーム、ワイコン、テレコンなどです。これで画角が28mmから210mmまでカバーできるようになりました。写真はワイコンをつけたところで、広角側が広がったことでイベント取材がやりやすくなりました。もっとも、すべて取り付けると結構なサイズとなり、これを首にかけてE3やGDC会場を歩き回るのは、けっこう難儀でした。多面式筆箱とかロケットペンシルとか、昭和な匂いがするデザインでした。

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映像素子は1/2サイズのCCDで色味はコテコテ系です。レンズがいいのか、けっこう細部までクッキリと映ります。シャッタースピードは8~1/750秒で連写速度は秒間2コマと、このあたりは銀塩カメラと比べるよしもありません。それよりも当時は撮影してすぐにPCに取り込み、メールで送れる利便性の方が重要でした。また、フラッシュがTTL調光に対応しており、難しいことを考えなくてもフラッシュモードにしてシャッターボタンを押せば、だいたいにおいて適正露出になるのも(個人的には)革命的でした。そのうえ、ちゃんと撮れているか液晶モニタで確認できるんですよ。うっかり撮影中に裏蓋をあけてしまい、フィルムを感光させてしまう恐れもなくなりました。トータルで見てメリットがデメリットを大いに上回っていました。

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他にスイバル式の長所として、カメラをおへその前あたりに持ち、下を向いて液晶を見ながら写真が撮れる点がありました。ちょうど二眼レフのような撮影スタイルです。しかもシャッター音を消すことができたので、周りから見ると写真を撮っているのか、撮った写真を確認しているのか、判断がつきにくい点がポイントでした。つまりスナップ写真に最適だったのです。ローアングルから撮る写真は新鮮でしたから、フィルム代や現像代が無料になったのを良いことに、パシャパシャと撮っていました。スイバル式のコンセプトは熱を発するバッテリーと映像素子の距離を稼ぐところから生まれたといいますが、撮影スタイルにも影響を及ぼす、優れたアイディアだったように思います。

もっとも、当時からいろいろと泣かされました。最大の難点はシャッターボタンを押してからシャッターが実際に降りる、いわゆるリレーズラグが非常に大きいことでした。体感で半テンポずれたのです。ブツ撮りなら問題なくても、イベント取材で講演中の人の写真を撮ろうとすると、この差は致命的でした。顔がその人っぽく写らないんですよ。手ぶれ補正機能がないのも厳しかったですね。フラッシュを炊いて手ぶれを防ごうとしても、リレーズラグのため変な顔に映ってしまうので……。できるだけ相手の動きを先読みして、タイミングを予測して撮影する必要がありました。また、乾電池のカバーの爪が壊れやすい点も難点でした。ニコンのサービスセンターに持ち込むと、修理費がべらぼうに高く泣かされました。これは設計ミスだろうと感じたものでした。他に一度、アメリカで大リーグを見に行って、駐車場で落としてシャッターユニットを壊してしまい、修理したことがありました。なんだかんだで、金食い虫でしたね……。

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けっきょくオプションパーツを使うとサイズが大きくなりすぎるのと、手ぶれ補正機能がないこと、望遠が最大200mm前後までしか使えないことなどから、次第に使わなくなっていきました。それでも初めて本格的に使ったデジカメなので、愛着がある一台です。今ではほとんど使うこともありませんが、なんとなく手放せないまま、物入れに眠っています。

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